【September mermaid♯01】 渉01:夏休みも終わり学校行事や進路調査など何かと忙しくなる9月    最高学年の僕らは、それぞれ部活も引退し受験モードへ入っていく。    僕はというと授業が終わり周りが予備校へ通う中、ある場所へ行くことが日課になっていた チャイムの音 教師01『はーい。今日はここまで。気をつけて帰れよー』 啓介01『渉ー。裕也達今からサッカーやるんだってよ。お前も行くか?』 渉02『あーごめん。いいやー』 啓介02『そっかー、お前最近忙しそうだよなー。わかった。じゃーな』 渉03『おう。また明日』 誰もいない廊下を歩いている 渉04『〜♪〜♪〜(鼻歌)』 渉05:学力テストの点数は散々だった。志望校の成績判定も評価はD。最悪だ。    だけど、最近の僕は機嫌がいい。そんなこと今の自分にはどうでもよかった。    今では全く使われていない東校舎。3階の一番奥にある教室にその子はいる。 教室のドアを開ける 渉06『やっほー』 渉07:僕が手を振ると、微笑みながら同じようにヒラヒラと手を振りかえしてくれる。    ロングヘアーのかわいい女の子。    僕の日課はなつみに会いに行くこと 渉08『おっ、雨降ってきた。啓介達大丈夫かなー?     あ、啓介っていうのはな。おれの親友ですげーおもしろいやつなんだ!この前なんかさ…』 いつものように僕はなつみに話しかける。身の回りで起きた出来事や友達の話。他愛もない話をなつみはいつも楽しそうに聞いてくれる。 今日も僕の独り言大会を開催した、そんな時だった ガラッ 啓介03『…ビビったー』 渉09『啓介。』 啓介04『ちょ、渉!お前こんなとこでなにやってんの!?っていうか誰だよその子』 渉10『なつみだよ♪』 啓介05『なつみだよ♪じゃないっ!その制服、隣の南女子高の制服じゃんか!     雨でサッカー中止になって帰ろうとしたらお前が東校舎入っていくのが見えて…     つけてみたらこんなとこで何してんだよ!しかも他校の女子とっ!父さんはお前をこんな風に育てたつもりはないぞ!     …えっ、ていうか何だ、もしかして俺お邪魔しちまったのか!?     何っ!?俺KY!?えっ訳わかんねー!!』 渉11『あはははっ なっ!おもしろいだろ!こいつ!』 啓介06『はぁ!?おもしろくねーよ!何だよ!2人して笑いやがって!』 渉12『あははっごめん。ごめん。』 啓介07『はぁ…。で、お前はこんなところで南女子の子と何してんだ』 渉13『ん〜。なつみはこの校舎から出ることができないの。だから、放課後なつみに会いにここに来てる。ただそれだけ。』 啓介08『ただそれだけって。ここから出られないってどういうことだよ』 渉14『わかんないよ。あ、そうだ啓介も手伝ってよ!なつみの記憶を取り戻すんだ』 啓介09『はっ?どういうこと?』 渉15『記憶喪失らしいんだ』 啓介10『ちょっと待てよ。自分の名前知ってんじゃん』 渉16『なつみって名前は僕がつけた』 啓介11『は?』 渉17『僕がなつみを見つけたのが始業式の日なんだよ。夏休み中にここに来たみたいだから、夏休みをもじって、な・つ・み。いい名前でしょ』 啓介12『(ため息)…あっそう』 渉18:…今になって思うんだ   もし、あの時僕がなつみの存在に気づいていなければ   僕らは…あの子は一体どうなっていたのだろう 渉19『よしっ!なつみ、こいつがさっき話してた啓介。』 啓介13『おい、俺の何の話してたんだよ。…まぁ、よろしく』 渉20『何か楽しくなってきたなっ!なつみっ啓介はなサッカーがすげー上手いんだっ!なのに3年間帰宅部でやんの。もったいねーよなー    きっと今度ある球技大会も大活躍間違いなしだろうなっ!』 啓介14『渉っハードル上げんな!』 渉21『あっ、球技大会っていうのはな…って、サッカーもわからないかー。う〜んサッカーっていうのはな…』 渉22:新学期が始まり受験生がだんだん焦り始める9月。    今、僕らの少し遅い夏が今始まろうとしていた