【September mermaid♯4】 皐01:私は、本当に小さい時からどんくさくて注意力がまるでなかった。      なのに、おせっかいで困ってる人を見るとほっとけないし、そういう時ほど我を忘れて助けに行く。      みんなからよく、早死にするタイプだねって言われったっけ。      でも、笑い事じゃなくなってしまった。…本当にバカだ。それに、最低だ。      私は、人の親切を仇で返してしまった。 廊下を走っている 渉01『…はぁ、はぁっ…はぁ』 ガラッ 渉02『なつみ!!!!』 誰もいない教室 渉03『なつみ!なぁ、いるんだろ!どこだよっ!!なつみ!!!…なつみ!!』 皐02:ごめんなさい。私は嘘をついていました。    本当は記憶喪失なんかじゃないの。自分の名前も何もかもちゃんと覚えてる。    楠木君が私を見つけてくれた時、声が出なくて自分の事を伝えられなかった。それが誤解を招いてしまって…    でも、記憶を取り戻そうと一生懸命になってくれる楠木君の気持ちがすごく嬉しくて、このままでいいかと思ってしまったの。    私最低だよね。本当にごめんなさい。    自分勝手な事を言ってるのはわかってるけど、私はすごく楽しかった。まるで夢を見ているみたいだった。    もう、ここには居られないみたいだし、これ以上迷惑もかけられないから行くね。    私に気付いてくれて本当にありがとう。そして、こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい。            この数日間すごく、すごく幸せでした。 渉04:柳田 皐。なつみの姿と引き換えに黒板に残されていった文字の最後には、丁寧な字でそう書いてあった。    きっと、なつみの本当の名前だろう。    『…んだよ。何勝手に消えちゃってんの?意味わかんねーよ』 ガラッ 啓介01『…はぁ、はぁ。…っ、なつみは?』 渉05『いない。』 啓介02『…マジ、かよ。…なんだよこれ。』 渉06『なつみが書き残しっていった。』 啓介03『…柳田 皐。』 渉07『…はっ、笑っちまうよな。勝手に勘違いしてたんだ。なつみは記憶喪失何かじゃなかった…最初からちゃんと、話、聞いてあげてたら…』 啓介04『お前は悪くないよ。渉。…なぁ、なつみの本名がわかったんだ。柳田皐について調べてみないか?』 渉08『…調べる?』 啓介05『あぁ、俺達あの子の事何も知らなかっただろう?』 渉09『…そうだな。』 啓介06『もしかしたら、ここにいた理由もわかるかもしれない』 渉10『あぁ、行こう。』