【September mermaid♯5】 〜回想〜 あかり01『皐ー、まーた西高のグランド見てんのー?』 皐01『うんー』 あかり02『ほんと飽きないよねー』 皐02『へへへー』 あかり03『サッカー、昨日もやってなかった?』 皐03『やってた』 あかり04『…そんなに気になるなら話しかければいいのに。』 皐04『へっ!?』 あかり05『学校隣なんだしさ』 皐05『い、いや、いいよ!無理だよ…』 あかり06『だってここから眺めてるだけじゃ、何も始まらないよ』 皐06『うー…』 あかり07『好きなんでしょ?』 皐07『へっ!?……うん。好き』 あかり08『ふふっ、なーんて名前だったけ?その人。』 〜〜 啓介01:放課後、俺たちは隣にある南女子へ向かった 渉01:柳田皐。南女子高等学校3年2組。    夏休みの半ば、信号無視した車に引かれそうになった男の子を庇い亡くなってしまった。    吹奏楽部副部長で楽器はクラリネット。お笑い好きで、運動は少し苦手。    誰からも好かれる様な、周りの人をとても大事にする優しい女の子。 啓介02:聞き込みを始めて20分ぐらいたった頃、皐の親友だったという水野あかりに出会った。 あかり09『楠木渉…く、ん?』 渉03『えっ!?』 あかり10『やっぱり楠木くんだ!柳田皐って、何であなたが皐のこと知ってるの?』 渉04『…知ってるけど、何も知らない。だから知りたいんだ。君、皐の友達なの?』 あかり11『親友よ。ねぇ、その話詳しく教えて』 〜回想〜 (あかり08のセリフ「なーんて名前だったけ?その人」) 皐08『…楠木渉くん』 あかり09『ね、ね。その楠木渉くんのどんなとこがいいの?』 皐09『ど、どんなとこって…何か笑顔がすごくキラキラしてて、いつも元気で。きっと、とっても優しい人のような気がするの!』 あかり10『そっか、そっか♪』 〜〜 渉05:新学期が始まって、皐と出会ってから今日までを、すべてあかりに話した。    そして知った。皐は、僕に恋をしていた。    嘘だと思った。嘘であって欲しかった。皐が僕の事を好きだったと知った時    無神経すぎたなつみへの言動が次々を頭をよぎり、胸をえぐられる様な後悔で自分を殺したくなった。    あかりは僕に何度も感謝の言葉を言っていたけど、より一層自分を憎くむことになった。 渉06『…ックショウ、畜生!!!!何であの時ちゃんと話を聞いてあげられなかった?勝手に記憶喪失だと思い込んで、勝手に「なつみ」なんて名前つけて    一度も、一度も本当の名前で呼んであげられなかった。』 啓介03『渉…』 渉07『バカだ、本当にバカだ。』 啓介04『渉、水野も言ってただろう。あの子に最初に気付いてくれたのがお前で本当によかったって。』 渉08『でも、僕は皐を皐として接してあげられなかった。何も知らないまま一人で舞い上がって、何も知られないまま皐は一人で消えてった。』 啓介:…。 渉09『…僕も好きだったんだよ。でも皐じゃなくてなつみだったんだっ!!』 啓介05『あぁ、わかるよ。でも、お前の話を聞いてたあの子は本当に幸せそうだった。』 渉10『え…』 啓介06『黒板にも書いてあっただろう。お前の一生懸命ななつみへの気持ちが嬉しかったって。』 渉11:…。 啓介07『あの子は、それでよかったんだ。お前はあの子が思ってた通りの優しい人だった』 渉12『…っ、皐、好きだ。好きだよ皐っ!!』 渉13:彼女は、突然の死に出遭い。自分の片思いの相手に会うためにもう一度ここへ戻ってきた。    その相手には出会ったものの声を失い、思いも伝えられないまま。また消えてしまった。    切なく、儚い、まるで人魚姫のような女の子だった。