『エイルに何事か伝言をことづけた後、ヴァーリはハルバとその部下たちに連行されてしまいました。  ハルバはすぐにでも風の扉を自分のものにするため、ヴァーリに案内をさせるつもりです。  そしてヴァーリの話に従い、まずアガルタ湖にあるという封印へ向かいました』 ハルバ「封印が水底に沈んでいようとはな…その神像に間違いないのだな」 ヴァーリ「封印とは物体にあらず。正確にはこの湖そのものが封印であり、     水底に沈む偶像は我が祈りを風の神に届ける媒介にすぎない」 ハルバ「ふむ、何にせよ魔力さえ手に入ればよいのだ。さて、風の神の使者よ。    我が部下が神像を引き上げたようだ。さっそく封印を解いてもらおう」 ヴァーリ「…わかった。しばし待て」 (ヴァーリが祈りのようなものをつぶやく。アドリブで結構ですので、  ぼそぼそと小さな声で呪文のように何か唱えてください) ヴァーリ「終わったぞ」 ハルバ「な…待て、今ので終わりだというのか?」 ヴァーリ「そうだ。封印は解かれた」 ハルバ「本当だろうな?貴様、私をだますと楽には死ねんぞ!」 ヴァーリ「仮に私を殺せば、それこそ封印は永遠に解かれぬ。     ひとまず信用するがいい。それ以外に道はないぞ」 ハルバ「くっ…まあいい、とにかく次の封印、アトラス山の遺跡に向かうぞ」 ヴァーリ「せっかちだな…君のために働いた蛮族たちを少しはねぎらってやってはどうだ」 ハルバ「蛮族など働きアリよ。ねぎらいなど無用だ」 『その時、すっと風が吹くように静かに、しかし不思議に存在感のある男が現れました。  年齢は20代半ばといったところでしょうか、しかしどことなく威厳と気品を漂わせています』 レイダ「蛮族などという呼称はやめてもらおう、皇子よ」 ハルバ「レイダ…来ていたのか?何故このようなところに」 レイダ「この近くにラシャンナ帝国に与する都市がある。そこを攻めていたのだ。    しかしこんなところに封印があるとは思わなかったがな。    それよりも皇子よ。一度は滅んだとはいえ、我らはペルソス王国の誇り高き戦士だ。    蛮族と呼ぶのはやめていただきたい」 ハルバ「ふん、戦士か。今やそこらの野蛮人どもと混ざり合ってどれがペルソス人やら分からぬではないか。    ペルソス王国の名も落ちたものよ」 レイダ「くっ…今は貴様に手を貸すほかはないが、その傲慢さはいずれ命取りになるぞ…!」 ハルバ「くっくっく、心配するな。間もなくここにいる風の使者が『風の扉』の封印を解き、    我が手に無限の魔力をもたらしてくれる。そうなれば私が皇帝の座につき、    貴様ら蛮族…ペルソスと調停を結び、この大陸でのペルソス人の復権と安住の地を約束する。    それまでは辛抱するんだな」 レイダ「風の使者…貴殿が封印を解くのか」 ヴァーリ「ああ。君がペルソスの残党の指揮官か?」 レイダ「そうだ。王国軍ではいち武将にすぎなかったが、他に人がおらんのでな。    …しかし貴殿、どこかで会ったことはないか?」 ヴァーリ「…気のせいだろう」 レイダ「そうか…?まあいい、私はそろそろ失礼する。皇子よ、封印が解かれた暁には、    約束を忘れてくれるなよ」 『レイダは立ち去りました。そしてヴァーリは歩み去っていく彼から視線を外さないまま、  小声で皇帝の息子に訊ねました』 ヴァーリ「…ハルバ、ペルソスの復権を認めるなど嘘なのだろう」 ハルバ「無論だ。何故かつて敵だったペルソスを生かしておかねばならぬ?」 ヴァーリ「しかし、ペルソスの指揮官と通じているのならば互いに兵を退けばいいだろう?     なぜ戦を続ける?」 ハルバ「知れたこと、皇帝に気づかれぬよう風の扉を手に入れるには、ペルソスどもと    戦っているふりをしなければならぬ。それにはペルソスの協力が必要だ」 ヴァーリ「戦のふりか…そして風の扉の力を手に入れたら用済み、というわけか」 ハルバ「そういうことよ。くっくっく…しょせん敗軍の残党の指揮官、読みが浅いわ…    はっはっはっは…!!」 ヴァーリ「訊いておいてなんだが、そのようなこと、私に話してしまっていいのかね?」 ハルバ「ふん、貴様とて封印が解かれれば用済みになるのだ。何の不安があろう?    まあ、私の手に無限の魔力をもたらしてくれるのだから、命ぐらいは助けてやらんでもない。    くくく…私は寛大であろうが?はっはっは」