一話 その1 写真をリリエンタールに見せながら、 日野父1「こっちがお姉さん。ちょっと気難しいけど、根はいい子だ。      こう見えて拳法が強いから、いざという時に頼りになる。」    2「こっちがお兄さん。普段からのんびりしてて、根もやさしい。      物を作るのが好きだから、きっとお前にも色々作ってくれるぞ」 日野父3「私たちとはしばらく会えなくなるけど、お前にはお姉さんと      お兄さんがいるから大丈夫だ。いいね?」 リリエンタール(以下リリ)1「はいっ!」 タイトルコール リリ2「賢い犬リリエンタール」 ナレ1「第一話 賢い犬リリエンタールと日野兄妹(きょうだい)」 場面:空港にて 兄1「もう着く頃だ。楽しみだなあ! どんな子だろうね?」 てつこ1「慌てなくてももうすぐわかるわよ」 兄2「ハハハ。てつこの方がそわそわしてるじゃないか」 てつこ2「なっ! 全然してないわよ、そわそわなんて!」 手紙を見る 日野父4『二人へ。二人とも元気ですか? 父さんと母さんは元気です。    5『今度久しぶりに何日か日本に帰ります。あななたたちの     弟もいっしょです。楽しみにしてください』 てつこ3「父さんたちっていっつも急なのよね…      おかげで今日の稽古さぼっちゃったじゃない」 兄3「てつこはがんばり屋さんだなぁ。一日くらいいいじゃないか」 てつこ4「ダメよ!…んー、でも、今日のところは弟に免じて許してあげるわ」 兄4「ははは。一緒に稽古出来るといいね」 大きな箱を抱えた誰かが二人のもとへ走ってくる。 早乙女1「てつこちゃん! お兄さん!」 兄5「あれ、早乙女さん…? 父さんたちは?」 早乙女2「ゼー、ハー…申し訳ない! 博士たちは来れなくなった。      ちょっと、その…いろいろ事情があってね」 顔を見合わせる兄妹 兄6「そうですか。あの、僕たち今日弟が来るって聞いてたんですけど…」 早乙女3「え、そうなの?! 弟?! うーん…」    4「僕はこれを君たちに届けるという話しか聞いてないんだけどなあ…」    5「なるべく早めに、人目につかないところで開けるように、だそうだよ」 兄7「はあ」 早乙女6「ハッ、ごめん、ぼくもちょっと急いでるんだ。博士には家の方に      連絡を入れてもらうよう伝えておくよ! じゃ、また!」 兄8「ごくろうさまです…」 タッタッタッ。止まる。 早乙女7「ハア、“弟“…か。間違っちゃいないけど、きっと     てつこちゃん怒るだろうな。博士も一体何考えてんだか」    8「おっと、こうしてはいられない」 一方、取り残されぽかーんとする二人 兄9「…あーあ、弟はまた今度かあ…」 てつこ5「…ふん! 父さん達のことだからこんなこともあると思ってたわ」 兄10「…………。この箱なんだろうな。開けてみようか」 てつこ6「…好きにすれば」 ナレ2「不思議な箱を手にその場を去る二人。その背後に、怪しい黒い影が迫る」 去る二人。入れ替わりに黒服の男が現れ、誰かと電話している。 黒服1「…ハッ、まだ確認出来ていません。…はい。はい、空港についたのは間違いありません」   2「…了解。引き続き『RD-1(アールディーワン)』を追います」 場面転換:倉庫などのあるところ 兄11「ほら、開けてみなよてつこ!」 てつこ7「はいはい。わかったからもう…」 大きくため息をつくてつこ。 てつこ8「はーーー…(弟…会いたかったな…)」 箱を開けるてつこ。そこにいたのは犬のような生き物。 リリ2「ニコリ」 兄12・てつこ9「っ?!」 思わずてつこは蓋を閉める。 リリ3「なわー!」 てつこ10「変なのがいた…」 兄13「犬っぽい顔だったけど、鳴き声が変わってるかな」 リリ4「なわー、なわー」 もう一度蓋を開ける。 てつこ11「犬? よね? ぶさいく…」 兄14「犬だね」 犬は箱からよじ登り転げ落ちる。 リリ5「おぶっ。(紙を取り出し)…おほん! 第一印象は笑顔が大事!!」 兄15・てつこ12「しゃべった?!」 てつこ13「…ていうか、二本足で立ってる…?!」 リリ6「しまった、間違えた! 裏側のだった! おほん、おほん」   7「はじめてまして! リリエンタールと申します!     どうぞよろしくおねがいます!!」 ※はじめ(て)まして。おねがい(し)ます。()内が間違っている。 兄16「おおー、礼儀正しい…?!」 てつこ14「なんなの? この犬…!」 リリ8「詳しくはこれに!」 手紙を差し出すリリエンタール。 兄17「あっ、父さんから? なになに…」 日野父4『二人へ。ちょっと予定が変わってしまい帰れなくなりました。ごめんなさい』    5『このメモを読んでいるなら、おそらく目の前に賢い犬が一匹いると思います。     その犬があなた達の新しい弟、リリエンタールです』 てつこ15「はあ?! …弟?!」(おとうと…おとうと…? 弟って…コイツ?!!) 兄18「いやあ、そうだったのか! はじめまして、兄です。こっちはてつこ」 リリ9「今日からお世話になります!」(ぺこり) てつこ16「 イ ヤ 」 リリ10「な?!」(ガーン) 幽鬼のような顔で、 てつこ17「何、いってんの…? どうぞよろしく…?       フフフ、よろしいわけないでしょ…」 リリ11「?! ?! な、な、な…」 てつこ18「弟は犬でした…?! あー甘く見てた! 父さんたちの       変人っぷりを甘く見てたわ!」 兄19「いやあ、僕は別に弟が犬でもいいけどなあ」 リリ12「わほっ!」(ぱああ) てつこ19「しまった…兄貴も変人(あっち)がわだった…!」 全力で否定するてつこ てつこ20「あたしはイヤよ! あたしは普通の人なの! 普通の犬はしゃべらないし、       普通の人は犬を弟って言わないの! 変人のやることにあたしを巻き込まないで!」 兄20「まあまあ。そういうことはリリエンタールに言っても仕方ないよ。父さん達に言わないと」 てつこ21「ぐっ…!」 兄21「とりあえず家に帰ろう。ほら、これつづき」 日野父6『あと、リリエンタールを狙っている人たちがいるので      気をつけて。あなたたちなら大丈夫だと信じています。父より』 てつこ22「ん……? なにこれ…面倒事のにおいがぷんぷんするんだけど…」 兄22「うん、急いだ方が良さそうだ」  てつこ23「フフフ…もう一回そいつ箱に詰めて置いていけばいいんじゃない?      きっと親切な人が拾ってくれるわよ」 リリ13「ノーーー!」 兄23「いやいや、ダメだろう…    でも、リリエンタールを連れて歩くのは目立つな…」  24「また箱に入れるのもかわいそうだし…よし!    リリエンタールはぬいぐるみってことにしよう」 てつこ24「この箱はどうする?」 たまたま通りかかった掃除のおじいさん 掃除のおじいさん1「ゴミなら回収しますよ」 兄25「丁度良かった。お願いします」 てつこ25「やばい。バスもう来るわ!」 バスの中 兄26「ふーー。間に合った」 てつこがかかえたリリエンタールを少女が見ている。 少女1「ほあ…ワンちゃん!」 リリ14「リリエンタールと申します」 少女2「!(驚いた声)」 リリ15「(何かの気配を感じて)はっ!」 てつこ26「このぬいぐるみ、頭叩くとしゃべるのよ! すごいでしょ!」 ドムドムドム… リリ16「申し訳ない、申し訳ない」 おばあちゃん1「まあ! よくできてるわねえ」 少女3「リリエンタール!」 バスの運転手1「(車内放送)えー、本日は空港連絡バスをご利用いただきまして、誠にありがとうございます」       2「このバスは空港と蓮乃辺(はすのべ)駅を往復する専用バスでございます」       3「蓮乃辺駅には一時間ほどで到着する予定です。ごゆっくりおくつろぎください」       4「危ないですので運転中は立ったり歩いたりしないでくださいね。では発射しまーす」 全員「はーい」←注:セリフ番号はリリ17、てつこ27、兄27、少女4、おばあちゃん2、あとの女子大生、大学生A・B・Cは1 場面転換:先程の倉庫裏 黒服数人が掃除のおじいさんを囲み、一人が電話で連絡している。 黒服3「…ええ、入れ物は見つけました。入れ物だけです。中はカラでした」   4「RD-1がどんな形状かはまだ不明です。はい、引き続きRD-1を追います」 掃除のおじいさん2「し、知らん知らん! わしは何も知らんぞ!!」 シュバイン1「まあまあ、落ち着いてくれじいさん。俺たちはその箱の中身を追っててね」      2「その箱を捨てたやつのことを思い出してもらえるとありがたいんだが」      3「ほんの小さなことでいい。例えば駐車場の方に行ったとか、       バス停に向かったとか。男か女か、大人か子供か」 おじいさん3「だからわしは何も知らんと…」 シュバイン4「そう言わずに思い出してくれよ。さもなきゃ俺たちは、空港から        出た全部の車・バスを襲わなきゃならなくなる」 おじいさん4「なっ…?!」 シュバイン5「関係ない人を巻き込んじゃいけないよなあ。こっちも手間が       増えるし、誰も得をしない。…そうだろ?」 おじいさん5「お前さん達、一体…」 シュバイン6「知らなくていい。あんたはただ、見たことを話せばそれでいいんだ」 おじいさん6「う、うう…」 電話をかけるシュバイン シュバイン7「RD-1の所在がわかった。蓮乃辺行きの連絡バスだ。       一番近いチームは至急確保しろ」